教授あいさつ
Greeting

私が大切にしていること

和歌山県立医科大学
分子遺伝学講座
教授 井上徳光

私たち分子遺伝学講座は、2019年1月より分子生物学と遺伝学を担当する基幹講座として、先端医学研究所?分子医学研究部から新たにスタートしました。

私が医学部の学生だった頃、幼い頃に読んだ図鑑と同じように、分類学として病気を学びました。病気の3主徴とか、主要症状のうち何項目かを満たす時に、?病とするなどです。その頃の私は、その条件を十分には満たさないような病気がたくさんあるにもかかわらず、既知のどれかに当てはめようとしていました。しかし、そんな私の未熟な医学の考え方を一変させたのが、世界で初めての「補体」の先天的異常症に出会ったことでした。その病気は、発作性夜間ヘモグロビン尿症 (PNH)と呼ばれる多くの後天性の疾患に隠れた先天性の病気で、異なる病気でした。それ以来、その病気の奥に隠れている分子メカニズムの解明を目標にしてきました。それゆえ、私は、病気の例外や特徴を見逃さないこと、分子メカニズムを探るための新しい方法を積極的に取り入れ、開発することを大切にしてきました。このようにして得られた結果から病気の本質がわかれば、確実に、新たな診断方法や、新しい治療法が開発できるのではないかと考えています。

現在、私たちの研究グループは、2つの領域の病気を中心に、病気の分子メカニズムの解明に取り組んでいます。1つは、長年取り組んできた「補体」が関わる疾患のエキスパートとして、「補体」が関わる病気の分子メカニズム、2つめは、免疫細胞などからなるがんの微小環境形成に関わる分子メカニズムを解明することを目標にしています。「補体」の研究では、補体の活性化を制御する抗補体薬の登場で、臨床的には注目されている疾患群の解析と解明を行なっています。「がんの微小環境」の研究では、世界に先駆けてがんから多量に分泌される「乳酸」が、がんの免疫環境の変調を引き起こすことを明らかにしました。病気には、まだまだ多くの謎が隠されていて、そこには分子で説明できるメカニズムが存在すると考えています。

病気の分子メカニズム解明に興味のある医師、薬剤師、看護師、検査技師、生物学を愛している研究者の皆さん、私と一緒に考え、病気の分子メカニズムを解明して、より良い治療法を開発しませんか?

略歴

1988年
岐阜大学医学部医学科卒業
1988年
岐阜大学医学部付属病院研修医(小児科 折居忠夫教授)
1989年
岐阜大学大学院医学研究科内科系専攻博士課程入学
1991年
大阪大学微生物病研究所 特別研究学生(免疫不全研究分野 木下タロウ教授研究室)
1993年
岐阜大学大学院医学研究科博士課程修了
1993年
大阪大学微生物病研究所 助手(免疫不全疾患研究分野)
1997年
米国University of Texas Southwestern Medical School at Dallas Research associate (Andrew R Zinn研究室)
1999年
大阪大学微生物病研究所 助教授(免疫不全疾患研究分野)
2001年
大阪府立成人病センター研究所?免疫学部長
2009年?現在
京都大学医学部人間健康科学科 非常勤講師
2010年?現在
大阪大学微生物病研究所 招へい教授
2012年?現在
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科?獣医学専攻 客員教授
2017年
大阪国際がんセンター研究所?腫瘍免疫学部 部長
2019年
和歌山県立医科大学分子遺伝学講座 教授

現在に至る

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