ハワイ大学留学について
和歌山県立医科大学 6年 富田玲美
私は、2024年4月にハワイ大学留学に行ってきました。そのことについて、簡単に報告させていただきます。
○まず、ハワイ大学留学ではどのような実習が出来るかを説明いたします。
1週間の渡慶次(とけし)先生のクリニックでの実習と、3週間のKuakini Medical Centerでの実習に分かれます。
渡慶次先生のクリニックは、かかりつけ医の役割を果たしており、患者さんは定期健康診断のためか、比較的緊急では無い急症があればクリニックを受診します。基本的に患者さんは来院すると問診を受け、先生の診察を受け、その後血液検査の結果などを見ながら先生が生活習慣のアドバイスをしたり、悩み事を聞いたりします。ここで私達Observerが出来るのは、患者さんへの問診やカルテ入力、プレゼン等です。その他誰でも出来る細かいお手伝いなどをします。その中で、先生が診察をし、患者さんと接する様子を観察します。また、空き時間には先生が病気の説明、アメリカの風習や疫学、歴史や医師としての心構えの話などをしてくださいます。
Kuakini Medical Centerでは救急車で運ばれてきた人の治療をし、退院や転院まで管理
します。日本のように科には分かれておらず、どの科の疾患も診ることが出来ます。医師達は4チームに分かれ、それぞれ4日に1回救急の受け入れ(オンコール)を担当します。私達Observerは、4つのチームのいずれかに属し、そのチームが抱えている患者を1人担当します。その担当患者について、毎朝カルテで情報収集したり、問診や身体診察を行い、アセスメント/プランを考え、チームミーティングで報告します。そこで先生達に修正や補足してもらった物をプレゼンの形式に沿ってまとめ、担当患者の主治医にプレゼンします。
○次に、私が実習中に感じた壁についてお話しします。
まず、1番最初に感じたのは、受動的にしていても先生から丁寧に教えてもらえる日本での実習とは大きく異なり、自主性を持って積極的に質問や参加をしていく必要があるということです。慣れないことで、最初は勇気が入りますが、段々自然と出来るようになりました。
次に驚いたのは、ミーティングなどで医師同士が早口話しているのを聞いても、ほとんど理解が追いつかないことです。日本で英語を勉強するのと、現地で実際話される英語は大きく違うということを改めて感じました。これも、少しではありますが次第に耳が馴染むようになったのは嬉しかったです。
もうひとつはプレゼンテーションの難しさです。アメリカの医学生と比べると、普段声を出して発表する機会がほとんどないので、実際やってみると思うよりも難しいです。先生に聞こえやすいように英語を読み上げること、箇条書きにまとめた物を自然な流れに言い直す表現、最後まで自信を持って発表することなど様々に課題がありました。これは、先生にプレゼンのアドバイスを聞いたり、毎回プレゼン後にフィードバックをお願いしたり、現地の医学生のプレゼンを録音して聴き直したり、他の先生が書いたカルテから外れて自分なりの表現を考えたりして工夫を続けるうちに少しずつ改善していくことが出来ました。
全体として言えることは、アメリカの医学生が優秀過ぎて自分が情けなくなったりしますが、あまり自分を追い込まず、少しずつ自分のペースで出来ることを増やしていけば良いと思います。
○最後に、自分として大きく意味があったことを3つ挙げたいと思います。
ひとつは、外国人の友達が出来たことです。ルームメイトが韓国人の女の子だったのですが、滞在中家事を分担したり、遊びの計画を一緒に立てたり、実習で困っていることや悩みを相談したり、またお互いの知っていることや考え方を交換したりして、すぐに仲良くなりました。またルームメイトだけでなく、もちろんハワイ大学の医学生とも実習で一緒になり仲良くなることが出来ました。他の国の医学生と仲良くなることで、日本の外に比べる対象ができ、視野が広くなりましたし、単純に海外に友達が出来たという喜びが大きいです。
ふたつめは、日本とアメリカの違いを知ることが出来たことです。違いというといくらでもあげられると思いますが、中でも個人的に特に印象的だったことを2点挙げるとすると、まず一つは、アメリカでは日本に比べ、医師と患者が対等であるという意識が強く、より実践されていると感じました。もちろん病院の忙しさや医師1人あたりの業務量の違いもあり、一概には言えないことではありますが、患者が話していることを最後まで聞き、これ以上言いたいことが無いと本人が言うまで時間をかけて耳を傾けることが当たり前のようで、新鮮でした。もう一つは、医師は将来進む科を誰でも好きなように選ぶことはできず、成績次第ということでした。(これは韓国も同じだそうです)良い成績でないと、門戸が狭い科(特に外科系)には進めないようで、その分医学生たちも勉強熱心なようでした。将来の選択肢がかなり平等に与えられている日本は有難いなと感じました。
みっつめは、ロールモデルが出来たことです。これが本当に大きかったと思います。これまでは、ぼんやりと海外で働きたいなとは考えていても、イメージ力が弱く、あまり具体的な目標を持てず、逆算もできなくて、夢はありながらもそこに繋がる道筋は霧の中だったのですが、今回の留学中、数人の日本人の医師と出会ってお話ししてもらい、一気にイメージ材料が増えました。日本で既にどんなキャリアがあったか、USMLE勉強はどんな風にしたか、マッチングのあれこれ、ご家庭はどのようにしているか、アメリカで働く大変さ、面白さなどを聞き大変参考になったと思います。
○まとめ
今留学を考えている方もこれを読まれるかと思いますが、是非勇気を持ってチャレンジしてみてください。どんなにしんどかったとしても1ヶ月で終わりますし、皆が出来る訳ではない経験を持つというのは、どんな意味においても絶対にアドバンテージになります。
自分なんてと思わず、なりふり構わず、とりあえず応募してみてください。質問あれば、cloudtangerine@gmail.com にどうぞ。どんなくだらない質問でも、24時間365日お待ちしております。